顧客育成(ナーチャリング)とは?アプローチ手法や成功事例を紹介

顧客育成 アイキャッチ

この記事を読んでいるあなたは、

  • 顧客育成に関する基礎的な知識を知りたい
  • 顧客育成する際に重要な概念や戦略を知りたい
  • 顧客を育成するための分析方法や効果的なアプローチ方法を知りたい

上記のように考えているかもしれません。

今回はそんなあなたに「顧客育成に関する基礎知識や効果的なアプローチ方法」などをお伝えしていきます。

顧客育成(ナーチャリング)とは

顧客育成 とは

ナーチャリングは直訳すると「育成」という意味であり、ビジネスにおいては「顧客育成」といった意味で使用されます

見込み顧客が自社の商品やサービスを購入してくれる状態まで育成する、既存顧客をリピート購入してくれる優良顧客にまで育成する、どちらの場合も顧客育成と呼ばれます。なお、見込み顧客(リード)に対する顧客育成は、リードナーチャリングと呼ばれることもあります。

顧客育成はBtoCでは効果的な手法として一般的な考え方となっていますが、BtoBではまだまだ浸透していません

しかし、近年はBtoBにおいても顧客育成は効果的であると言うことが分かってきており、多くのBtoB企業が顧客育成のための施策を実施するようになってきています。

顧客育成(ナーチャリング)が重要視されている理由

顧客育成(ナーチャリング)が重要視されるようになった理由について解説していきます。

近年、新規顧客を獲得する難易度が上がってきている

企業が売上を立てていくために絶対に必要になるのは「顧客」です。

これまでは、電話やメール、飛び込み営業などでアポを獲得し、そこから訪問・商談を経て、受注を得るといったプッシュ型のアプローチ方法が一般的でしたが、ライバル企業の増加やインターネットの普及により、そういった従来の手法では、他社のサービス・商品との差別化することが難しくなってきています

また、今の時代、顧客はすぐに複数企業から無料で見積もりを取得することが可能なため、料金の安さや製品・サービスの品質などの数字的に分かりやすい部分だけで他企業と顧客の獲得競争をしようとすると、ライバルよりも価格を下げたり、開発費用を増やしたりするしかなく、結果的に新規顧客を獲得するためのコストがどんどん高くなってしまいます

そのため、これまでと違った切り口の顧客へのアプローチ方法として、顧客育成(ナーチャリング)が注目されています

顧客育成によって失注による機会損失を大幅に削減できる

顧客育成が重要視されるようになってきた理由として、新規顧客を獲得するよりも見込み顧客を育成したほうが費用対効果が高いことが明らかになってきたという点が挙げられます。

従来のプッシュ型の営業手法だと、顧客が自社商品を必要としているタイミングと、こちらからアプローチするタイミングにズレが生じて失注してしまう…。そして、失注したら数カ月後に再度電話してアプローチするといったケースが多々ありました。

BtoB営業の世界では取引先を増やすことが重視されていることが多いため、とにかく営業数を増やすといった方針を採択しているケースが多く、顧客を育てるといった意識が薄くなりがちです。

しかし、BtoBでは一回あたりの取引額が高額であることが多いため、タイミングのズレによる一回の失注が大きな損失を生んでしまいます

そういった失注による機会損失を生まないためにも、顧客育成を行うべきなのです。

顧客育成を適切におこなうことで、見込み顧客が欲しいと思ったタイミングで自社に問い合わせをしてくれるケースが増えるため、従来のように営業マンを増やして新規開拓をする必要性や機会損失がなくなり、コストを押さえて効果的に顧客を獲得できるようになります。

優良顧客を育成することでLTVの向上が見込める

優良顧客を育成することでLTVの向上を図ることが可能になります。

LTVとは、ライフタイムバリュー(Lifetime Value)の略で、「顧客生涯価値」といった意味です。

顧客育成を行うことで、見込み顧客が優良顧客になってくれる可能性が高くなります

優良顧客になって貰うことができれば、継続的に発注してくれるリピーターになってくれるだけではなく、他の顧客を紹介してもらえる可能性も高くなります。

従来のようなプッシュ型の営業の場合は、受注してもらうことを重要視してしまうがために、先方との期待値調整が上手くできず「営業マンが説明していたほど良い製品じゃなかった…」「御社のサービスを導入してみたけど、思ってたよりも効果がでなかった…」といったような不満やクレームが生じてしまいがちでした。

そのため、プッシュ型の営業だと継続的に発注してもらえる確率が低く、新規顧客を開拓し続けなければいけないといった負のサイクルに陥ってしまう可能性が高くなってしまいます。

しかし、顧客育成をおこなっていれば、自社の商品やサービスの特徴や活用方法、効果などについてあらかじめ理解した状態で発注してもらえるため、期待値のズレが生じにくく、結果的に顧客満足度が上がり、継続的に発注してもらえる可能性が高くなります。

顧客育成(ナーチャリング)を成功させるための重要戦略

顧客育成 戦略

顧客育成(ナーチャリング)を成功させるための重要戦略について解説していきます。

自社にとっての優良顧客像を定義する

まずは自社にとっての優良顧客を明確に定義することが重要です。

顧客育成のステップとしては、見込み顧客から既存顧客、既存顧客から優良顧客の順に育てて行く必要があります

顧客育成の最終ゴールは優良顧客の育成となるため、自社にとってどんな顧客が優良顧客なのかを明確に言語化して、社内で共有することが重要になります。

リピート購入してくれる顧客を育成したいのか?それとも新規のお客さんを紹介してくれる顧客を育成したいのか?

そういった理想の顧客像を作成して、そこから逆算して施策を検討していく必要があります。

見込み顧客のニーズを整理して明確にする

最終ゴールである優良顧客像を定義したら、顧客育成の最初のステップである見込み顧客のニーズを整理していきましょう。

見込み顧客のニーズを整理する際には、既存顧客にアンケートを取るなどして、実際にヒアリングを行うのがおすすめです。

既存顧客からなぜ自社に依頼しようと思ったのかや、依頼しようとしたときにどういった課題があったのかなどをヒアリングすることで、見込み顧客のニーズをより明確にすることが可能になります。

顧客にとって有益な情報を発信する

顧客のニーズが明確にしたら、顧客にとって有益な情報を実際に発信していきましょう

有益な情報とは、顧客が知りたいと思っている情報です。実際にヒアリングして洗い出した顧客の課題を解決するようなコンテンツを発信していくよう心がけましょう。

ここで多くの企業が陥る罠として、自社が発信したい情報ばかり発信してしまうといったケースがあります。実際、業界内でしか分からないような専門用語を多用してしまっていたり、自社の良い点ばかりを強調した発信をしてしまったりしているような企業がかなり多く見受けられます。

特に顧客育成を担当者に丸投げしているような場合は注意が必要です。

担当者はどういった内容の発信をしていいのか分からないため、当たり障りのない自社の情報を発信してしまいがちです。そうならないためにも、有益な情報とはなにか?どうやって顧客にとって有益な情報を見つけて発信するのか?といったことは、できるだけ社内でマニュアル化するようにしましょう。

定期接触を図る

顧客育成において重要な概念、それは定期接触です。

BtoCだけではなくBtoB営業でも、顧客に対して定期的かつ継続的な接点を持つということが効果的な顧客育成に繋がります

見込み顧客に対して定期的に接触やアプローチすることで、無意識のうちに自社製品やサービスを覚えてもらうことができたり、最新の業界情報や自社情報を知ってもらったりすることが可能になり、実際に商談を行う際に話が早く進みやすくなるといったケースが多々あります。

また、定期接触は既存顧客に対しても効果があります

例えば既存顧客に対して定期的にアンケートを取ることで、相手の状況を把握したり、最新の課題感などを掴むことができたりします。そして、その課題を解決するような情報を発信して顧客育成をすることで、さらに信頼を得て継続依頼や紹介を貰ったりすることが可能になります。

このように、定期接触は顧客との信頼関係を築いていくための効果的な手法になるため、顧客育成のどの段階においても非常に重要になります

優良顧客育成に効果的なアプローチ手法

顧客育成 手法

それでは顧客育成に効果的な具体的なアプローチ手法を紹介していきます。

メルマガ(メールマガジン)やステップメールの配信

効果的な顧客育成手法として、メルマガの配信やステップメールの配信が挙げられます

メールマガジンやステップメールを定期的に配信することで、定期接触を図るとともに、見込み顧客の興味関心を育成し、自社の商品やサービスを知ってもらうことが可能になります。

メルマガとステップメールは、それぞれ特徴があり、向いている利用シーンも異なるため、どちらも併用するのが効果的です。

なお、メルマガ(メールマガジン)とステップメールには、以下のような違いがあります。

メルマガ ステップメール
配信タイミング 配信設定が必要 自動配信(トリガー型)
内容 1通完結型 ストーリー型
配信対象 購読希望者全員 特定アクションを起こした人のみ
向いているシチュエーション
  • 長期スパンで顧客獲得したい場合
  • ユーザーニーズが幅広い場合
  • 顧客の関心が高まるタイミングが読めない場合
  • 配信の即時性が重要な場面
  • ユーザーニーズが既に明確かつ狭い
  • 個別対応が困難な場合

オウンドメディアの運営

オウンドメディアとは、自社メディアのことをいいます。

オウンドメディアを運営することで、検索画面やSNSから流入してきた顧客に対して、自社の情報を知ってもらうことが可能になります。

オウンドメディアは完全自社運営のメディアとなるため、発信する内容を自由に決めることができるといったメリットがあります

SNSアカウントの運営

昨今、多くの企業が顧客育成のために活用しているのが、SNSです。

SNSアカウントを運営することで、より多くのユーザーに自社の情報を知ってもらうことが可能になります

SNSは基本的に無料で始めることが可能であり、一度バズることに成功すれば一気にたくさんの見込み顧客にアプローチすることも可能だというようなメリットがあるため、非常に多くの企業がSNSを活用して顧客育成を行なっています。

定期的なセミナーの開催

自社への関心がある程度高い見込み顧客に対してのセミナーは非常に効果があります

セミナーで顧客の抱える課題について深堀りした内容を伝えたり、質疑応答に答えたりすることで、見込み顧客からの信頼を掴み取ることが可能です。

コロナの影響でオンラインセミナーが増えており、セミナーに参加するためのハードルが下がったため、セミナーの効果は今後より大きくなっていくことが予想されています。

また、一度開催したセミナーの動画を録画して、その内容をメルマガで限定公開したり、オウンドメディアに掲載したりすることで、媒体を横断した顧客育成が可能になります。

紙のカタログやチラシの作成

紙のカタログやチラシの作成は、Webでリーチできない見込み顧客に対して効果的な施策になります

メルマガやオウンドメディア、SNSなどの施策は、どうしても若年層がターゲットとなってしまいますが、紙媒体であれば高齢層の顧客にも読んでもらいやすく、幅広い層にアプローチ可能になります。

作成費用や発送の手間はありますが、高齢者向けの商材を扱っている企業は、一度試してみるのが良いかも知れません

Web上でのトラッキング情報を収集する

オウンドメディアやSNS、メルマガや広告など、Web上で顧客育成する場合は、必ずトラッキング情報を収集するようにしましょう

ただ情報を配信するだけではなく、どの記事や投稿が読まれているかを確認することで、顧客のニーズや課題を把握することが可能になります。

収集したデータを生かして、適時配信する内容を変えていくことで、継続的な顧客育成ができるようになります。

顧客育成の際に使用する分析方法

顧客育成 分析

顧客育成の際に使用されることの多い分析方法を紹介していきます。

RFM分析

RFM分析とは顧客分析の一種で、Recency(最近の購入日)・Frequency(頻度)・Monetary(購入金額のボリューム)の3つの指標で顧客をランク訳する手法となっています。

RFM分析によって、自社にとって重要な顧客グループを特定し、それぞれのグループに適した施策を実施することが可能になります。

CPM分析

CPM分析とは、顧客ポートフォリオマネジメント(Costomer Portfolio Management)の略で、購買行動・経過日数・頻度を基準に、顧客層を10パターンに分類していく手法となっています。

CPM分析によって、購買を継続しているグループと購買しなくなったグループを明確に分類することができるため、それぞれの状況に合わせた効果的な施策を実施することが可能になります。

顧客育成を導入したBtoB企業の成功事例

顧客育成 企業

顧客育成(ナーチャリング)を導入している企業の成功事例を紹介していきます。

ウィルゲート株式会社

ウィルゲート株式会社は、Twitterを活用した顧客育成に成功しています

専務取締役COOの吉岡氏がTwitterを活用しており、フォロワー数は約2万以上となっています。

Twitter上で自社の事例や採用情報を発信してファンを獲得しており、顧客育成に成功しています。

StockSun株式会社

StockSun株式会社は、YouTubeを活用した顧客育成に成功しています

「StockSun-WEBコンサルティング-」といったYoutubeチャンネルを運営しており、従業員0人という体制を取っているにも関わらず、多くの取引先を抱えています。

顧客育成(ナーチャリング)についてのまとめ

顧客育成 まとめ

この記事では、「顧客育成に関する基礎知識や効果的なアプローチ方法」などをお伝えしました。

顧客育成は、顧客を獲得して売上を上げていくうえで、非常に重要な概念となります

重要な戦略を押さえた上で、自社に合った手法を取り入れていきましょう。