この記事を読んでいるあなたは、
- 「一身上の都合」の意味を知りたい
- 「一身上の都合」の使い方を知りたい
- 「一身上の都合」の理由の答えについて知りたい
上記のように考えているかもしれません。
この記事では、「一身上の都合の意味や使い方、理由の答え方」についてお伝えしていきます。
「一身上の都合」の意味とは
「一身上の都合」とは、「自分の身の上の事柄や境遇のこと」を指し、「いっしんじょうのつごう」と読みます。
ビジネスシーンでよく使われますが、日常生活のなかでも理由を詳しく伝えにくいときや、物事を円滑にすすめたい場合にも使われます。
言い換えるなら「家庭の事情」「個人的な都合」「諸事情」という言葉が当てはまります。
退職の際に「一身上の都合」が使われる理由
ここでは、退職の際に「一身上の都合」が使われる理由について解説していきます。
幅広い事情で使えるため
退職の際に「一身上の都合」が使われる理由として、幅広い事情に使えることが挙げられます。
退職には様々な理由があり、中にはそのままでは伝えにくい理由もあります。
例えば「仕事がキツい」「上司と相性が悪い」「給与が低い」というのも、退職を決意する理由のひとつです。
正直に伝えにくいこのような本音も、自己都合の退職であれば「一身上の都合」で表すことができるため、幅広い事情によく利用されます。
円満に退社するため
退職の際に「一身上の都合」が使われる理由として、円満に退社することが挙げられます。
会社を辞める時に、退職理由によってはトラブルで退職が長引くこともあります。
退職理由が会社への不満や上司・同僚とのトラブルだった場合、それをそのまま伝えると会社や相手としこりが残ったり、本当の理由が広まれば会社の雰囲気も悪くなることが考えられます。
退職はこれからもその会社で働く多くの人への影響も考える必要があり、できるだけ円満に退職するために「一身上の都合」は有効な退職理由となります。
マイナスのイメージを与えないため
退職の際に「一身上の都合」が使われる理由として、マイナスのイメージを与えないことが挙げられます。
退職を決意する理由の中には、業務内容や人間関係なども含まれます。
しかし、退職理由を正直に伝えてしまうと、「忍耐力がない人」「精神的に弱い人」といったマイナスのイメージを持たれてしまう可能性もあります。
たとえ辞めて繋がりがなくなるとしても、悪い印象を残すより良い印象で辞めた方がお互い気持ちが良いため、「一身上の都合」を使って退職するのがおすすめです。
退職の際の「一身上の都合」の使い方
「一身上の都合」は自己都合退職の際に使います。
退職の理由は以下の二つに分類されます。
- 自己都合退職
- 会社都合退職
ここでは、上記二つの退職理由について解説していきます。
自己都合退職とは
自己都合退職とは以下のような理由で退職することです。
- 転職・辞職
- 病気
- 結婚
- 介護
転職や辞職をする場合、会社から言われたのではなく、自ら望んで会社から離れる時は自己都合退職となります。
ただし、会社の法令違反や契約内容と実働の大きなギャップなどは、自ら望んで辞職したとしても会社都合の退職となる場合があります。
会社都合退職とは
会社都合退職とは以下のような理由で退職することです。
- 倒産やリストラ
- 定年による退職
- 契約満了
- 早期退職
他にも長時間の残業、給与未払い、パワハラなど、「自分の意志ではどうにもならない事柄」での退職は会社都合の退職となることが多いです。
ただし、「解雇」は基本的に会社都合の退職ですが、規約違反や犯罪行為など本人に大きな原因がある場合は自己都合の退職となります。
退職理由による失業保険条件の変化
退職理由が自己都合退職か会社都合退職かで失業保険の条件が異なります。
会社や上司に気を遣って会社都合の退職と書くにくく一身上の都合で退職と書いた場合、失業保険の給付開始が遅れる場合があります。
基本的に、会社都合で退職する方が失業保険の給付開始は早く、給付日数は長く、給付金は多くなります。
そのため、失業保険の対象となっている人は、一身上の都合を安易に使わないようにしましょう。
「一身上の都合」の使い方の例文
ここでは、「一身上の都合」の使い方の例文について紹介していきます。
履歴書に記載する際の使い方
履歴書に記載する際の使い方は以下の通りです。
○年×月 ○○株式会社 一身上の都合により退職
履歴書に使う場合は、退職した年月、会社名とともに、「一身上の都合により退職」と記載します。
面接でその内容について詳しく聞かれることはあまりないですが、もし聞かれた場合は「家庭の事情で…」などと濁す程度にしておきましょう。
退職届に記載する際の使い方
退職届に記載する際の使い方は以下の通りです。
このたび、一身上の都合により○年×月△日をもって退職させていただきたく、お願い申し上げます。
退職届を提出する場合にも、退職理由について正直に書く必要はありません。
親しい上司や同僚など、信頼できる人には正直に伝えても良いでしょう。
内定辞退を伝えるときの使い方
内定辞退に記載する際の使い方は以下の通りです。
このたびは内定をいただき、誠にありがとうございます。
その上で恐縮ではございますが、一身上の都合により内定を辞退させていただきたく、ご連絡しました。
内定を辞退する場合、内定へのお礼とともに一身上の都合で辞退したい旨を伝えます。
会社側も、就活生が何社も採用試験を受けていることは分かっているため、辞退の内容についてあれこれ聞いてくることはありません。
「一身上の都合」の理由を問われたときの答え方
ここでは、「一身上の都合」の理由を問われたときの答え方について解説していきます。
「一身上の都合」で退職した際には以下のような理由があります。
- 給料の問題
- 人間関係の問題
- 労働時間の問題
給料の問題
給料の問題での答え方例には以下のようなものがあります。
前職ではいくら努力しても給与に反映されずモチベーションが維持できなかったため、収入を増やせる環境で働きたいと思い退職しました。
給料の問題はあまり正直に言いすぎると「仕事内容よりお金の方が大事なのかな」と思われてしまいます。
マイナスのイメージを持たれないよう、仕事に対して積極的であることを伝えるようにしましょう。
人間関係の問題
人間関係の問題での答え方例には以下のようなものがあります。
前職は新卒からずっとお世話になっていましたが、業務も慣れてしまい人の入れ替わりもないため、一から新しい環境で働きたいと思い退職を決意しました。
人間関係で何かしら問題があり退職した場合、そのまま伝えるとネガティブな印象を与えてしまうこともあります。
たとえ人間関係が悪かった場合でも、ポジティブな言葉で言い換えるようにしましょう。
労働時間の問題
労働時間の問題での答え方例には以下のようなものがあります。
労働時間が不規則で生活リズムがなかなか掴めず、仕事にも集中できないため退職しました。
前職がブラック企業だったとしても、面接でそれを正直に伝えてもプラスにはなりません。
会社への不満や愚痴よりも、転職後どう仕事をしていくか前向きな気持ちを伝えるのがベターです。
「一身上の都合」に関してよくある質問
ここでは、「一身上の都合」に関してよくある質問について解説していきます。
「一身上の都合」が使えない退職理由はありますか?
会社都合の退職の場合、「一身上の都合」は退職理由として使えません。
会社都合の退職は、自分の意志ではどうにもできないこと、辞めざるを得ないことで、会社の倒産やリストラ、早期退職の他、パワハラ・セクハラもこれにあたります。
「一身上の都合」は便利な理由ですが、何にでも使えるわけではないことを覚えておきましょう。
江戸時代での「一身上の都合」とは?
江戸時代にも「一身上の都合」と同等の意味を持つ言葉がありました。
江戸時代には夫から妻へ渡す「三行半(みくだりはん)」という書類があり、これは今でいう離婚届です。
その内容は「離婚理由」「再婚許可」「離婚宣言」が主なもので、この離婚理由において詳細な記述はせず曖昧にしていたため、現在の「一身上の都合」に相当すると考えられています。
なぜ詳細な記述がなかったかというと、昔は今よりも離婚というのはさらに重いもので、両家の顔に泥を塗るようなことを避けたかったのでしょう。
また、離婚後に妻が再婚しやすいよう配慮したのかもしれません。
いずれにせよ理由を明らかにしないところは現在の「一身上の都合」に通じるものがあります。
LINEやSNSでの「一身上の都合」の利用法は?
「一身上の都合により、しばらくお休みます」「一身上の都合により、○○を変更させていただきました」など、詳しい理由を省くために使われることが多いです。
このように、LINEやSNSでも「一身上の都合」が使われています。
特にSNSをはじめとしたネット上の情報は半永久的に残るため、個人的な情報を残さないためにも「一身上の都合」は便利な文言と言えます。
「一身上の都合」意味や使い方まとめ
この記事では、「一身上の都合の意味や使い方、理由の答え方」についてお伝えしていきました。
「一身上の都合」の意味、使われる理由、使い方などについて紹介してきましたが、ビジネスシーンだけでなく日常生活でも使える便利なフレーズだということが分かりました。
詳しい理由や本音を伝えにくい場合に「一身上の都合」は便利ですが、退職や転職で使えるのは「自己都合の退職」だけと覚えておいてください。
また、退職届や履歴書など書面の場合は大丈夫ですが、面接の際、まれに「一身上の都合」の理由を聞かれることもあります。
万が一聞かれても慌てないために、ここで紹介した「一身上の都合」の理由を問われた時の答え方を参考に、事前に考えておきましょう。